教室
先日ガラスを壊した罰で、春華は一週間教室の掃除をする事になった。 「えーっ、じゃあ一週間もいっしょに帰れないのぉ?」 勘太郎は胸の前で両手のこぶしを握り締め、春華に抗議の目を向けた。そんなポーズが不思議なほどしっくりくる。 「やだ、やだ、そんなのー」 「しょうがねえだろ」 「じゃ、さ、ボク待ってるよ、ハルカの教室で。」 というわけで、放課後勘太郎は春華の教室にやってきた。 他の生徒はみんな帰ってしまった後で、春華は一人で真面目に机を運んでいた。 「ボクも手伝ってあげる ♪ 」 勘太郎は腕まくりをして、机を運びにかかるが… 「ハルカぁ、重ぉい」 すぐに音をあげてしまう。 「慣れねえこと、しようとすんな」 春華は勘太郎が運びかけていた机を受け取って、二つ重ねて机を運ぶ。 「すっごおい、ハルカやっぱり力持ちだねえ。さすが最強の鬼喰い天狗」 「今は喰えねえけどな」 「あーん、そんなコト言ってないよう」 勘太郎は春華の傍までトトトと走って行き、上着の裾を掴んで引っ張る。 「危ねえから、離れてろ」 「えー」 勘太郎は不満そうな顔をするが、やがて顔をぱっと輝かせ 「じゃ、ボク、バケツに水くんでくるね」 春華がやめておけ、と言うのよりも早く、勘太郎はバケツを持って走り出していた。 …そして、予想通りバケツの水をぶちまける。 「…勘太郎…、仕事増やすなよな…」 「えーん。ごめーん」 泣き顔になりかけた勘太郎を持ち上げて、ポンと教卓の上に座らせる。頭を撫でて、 「ココで見てろ。もう何もしなくていいから。な。」 「わかったよ…」 足をぶらぶらさせながらも、おとなしく座って待っていることにした。 やがて掃除終えた春華が一息ついて 「勘太郎、終わったぞ。待たせたな」 と勘太郎の方を見ると…勘太郎は教卓の上に上体だけ横になって、すやすや眠っていた。声をかけても起きない。 仕方なく、勘太郎をおんぶして、カバンを2人分持つ。 もしかして…いや多分…一週間毎日これが続くのか。がんばれ春華。