お団子
「ハルカぁ、お茶にしよ」 今日のお茶請けは、お団子。1本の串に5個付いているのが5本。近所の和菓子屋さんでタイムサービスだった。 茶の間ではめずらしく勘太郎がお茶を淹れている。いつもより濃いお茶を2人分淹れて、それぞれの前に置く。 「やっぱり、和菓子には濃いお茶だよねえ。ケーキだったらレモンティーって手もあるけどさ。」 レモンの酸味がケーキを引き立てるように、お茶の苦味がお団子の甘さをいっそう引き立てる。 早くも1本目を食べ終わった勘太郎は2本目にとりかかる。嬉しそうにお団子を頬張って 「う〜ん、おいひい〜」 と笑顔になる勘太郎に 「オレは1本でいいから、あと食っていいぞ」 と春華は言う。自分で食べるより、勘太郎が食べるのを見るほうがずっと楽しい。 「え〜やだぁ、ハルカとはんぶんコがいい」 勘太郎はもう1本を春華に渡す。 「そうか。じゃあ、食うか」 微笑みながら2本目の串を受け取る。2本ずつを食べ終えて、残りは1本。 「じゃ、これも半分コね、はい」 1個食べて春華に差し出す。春華が1個食べて勘太郎に返す。それを繰り返して最後に1個だけお団子が残った。 「これも半分コしよ」 半分だけ食べて春華に差し出す 「いや…オレはそこまでは…」 「え〜、ハルカのケチぃ」 「ケチって、あのな」 「ハルカが半分コしてくれないー」 「いいから食え!」 半分残ったお団子をむりやり勘太郎の口に押し込む。 「むぐぐぐ…ハルカの意地悪う」 「オレだっていつもオマエに優しくばっかしてるわけじゃねえからな」 「それって…あれだね」 何故か勘太郎は急に嬉しそうな顔になる。 「苦いお茶がお団子の甘さを引き立てるのと同じように、時々冷たくして、優しさを引き立ててるんだね」 「なっ、ナニ言ってんだオマエ」 「ふふ…ボクはハルカが優しいの知ってるもんね」 勘太郎は嬉しそうに春華の腕を両手で抱え込む。春華は困ったように目をそらす。 「くっだらねえことばっか言ってんじゃねえよ」 腕を振りほどこうとするが、勘太郎はますますぎゅっとしがみつき、小さな声で言った。 「時々意地悪してね。ボクが甘えすぎないように…」