第2話 みやの秘密?

 
  
    
    「ただいま−」  あんまり広くない2DKくらいのアパート。そのドアを女の子が開けると、奥のほうから黒いちっちゃな、かたまりが飛び出してきて抱きついてきた。 「くぬっ、くぬっ。くーちゃんをおいてどこいってたの?ねーね」 「ごめんねーくぬぎ。ちょっとガラガラでてまどっちゃってさー」 「わかった、みやぱぱがわるいんだねっ」  と、言うが早いかくぬぎと呼ばれた子猫はみやの首にかみついた。誰もそんな事言っていないのに。どうやらこの家では不都合な事はすべてみやのせいになるらしい。 「むー。いたい…かも?」 「みや、血出てるよ。全く鈍感なんだから。」 「そんで、まぐろはどうしたの?」 「ごめん。まぐろ当んなかった」 「がぁーーん。えーんえーん、みやぱぱがくーちゃんのかつおをとったぁー」  違うぞくぬぎ。おまけにかつおじゃないし。  しかし誰もくぬぎにはつっこまない。それどころか女の子も 「そーだよねー。ほんとにみやは悪いよねー」  とか言ってるし。それでいいのか、みや!?  しかしみやはぼーっと毛づくろいをしながら 「むー、そーかも。ごめんねくーちゃん」  とか言っている。これはこれでこの家はちゃんとまわっているらしい。まあ、家庭にはその家の事情ってモノがあるから、みんなが納得してればそれはそれでいいか?  ま、とにかくくぬぎが落ち着いたところで、3人(?)は旅行について、計画を立てる事にした。 「問題はさーもう一人を誰にするかだよねー」  女の子が一口揚げせんべい七味風味をボリボリ食べながら言った。そう言えば招待は4人だった。 この家はどうやら3人家族みたいだし、もう一人誰かいけそうだ。 「むー、そのことなんだけど、みやにかんがえがあります」  みやは短い足をむりやり曲げて正座をした。 「むすめ、ここにすわりなさい」 「なぁーにー、ぎゃはは。みやが真面目な顔してる。鼻の下にほくろがあるくせに−」 「ちゃんとききなさい、むすめよ。あなたももう11さいになりました。もうこのことをはなしてもいいでしょう。じつは、あなたは、わたしのほんとうのむすめではありません」  みやは長いせりふを喋ったので疲れたらしく、その場で丸まってしまった。その上あくびをしてから、うつらうつらし始めた。  げしっ!! 「もしも−し。みやー起きてる−?」 「えーっとなんだっけ。あ、そうだ。むー、びっくりした?」 「ぜーんぜん。だって知ってるもん」  女の子は平然と言った。 「むーーーーーっ!!!なんで――――」  みやは驚いて思わず2本足で立ち上がった。  女の子はたんすの上の写真立てを指した。そこには豹柄のレオタードを着てポーズを取っている筋肉ムキムキの女の人が写っていた。顔は女の子とすごく似てる。写真には『かわいいまなへ。ずっとおるすばんさせてごめんね。おかあさんより』と書いてあった。  この女の子、まなという名前らしい。 「だってあれがおかあさんじゃない!ずっと誕生日にプレゼント送ってきてくれてるし、お年玉も送ってくれるし。おかあさんって書いてあるし。私とみやとあんまり似てないしさー」 「くぬぬ。そんでもってくーちゃんのままだよねー。くーちゃんとままとそっくし」 「そーそー」  くぬぎと似ているかどうかは別としてどうやら秘密と思っていたのは、みやだけらしい。  みやはしばらくショックを受けて2本足で立ったまま放心状態になっていた。…が疲れたらしくころんと丸まった。 「じぶんのむすめとおもってそだててきたのに−。むすめには、ははとおもわれてなかったんだー」 「まぁ、みやもよくやってるよ、うん」  まなは何の根拠もなく請けあった。  みやはそれで満足したらしく、ゴロゴロと喉をならした。かなり簡単な性格だ。

   みやの人生最大の秘密も無事明らかになったところで、3人はまた話し合いを再開することにした。みやによればあやののおかあさんは山奥で格闘家として修行をしているらしい。その修行も、もうすぐ明けるのでみんなで迎えに行って、温泉に行こうという事に決まった。  途中には、うさぎばかりが住んでいる伝説の村もある。そこの村長さんの一人娘うさこちゃんは、美人で色っぽいと評判だ。その写真集は、ここの町でも売上ナンバーワンを誇っている。いろんなタレント養成所からアイドルになりませんかとお誘いがあるらしいが、村長さんがガンとして断っているらしい。写真集も有名な写真家がわざわざ出向いて撮ったもので、ずっと村長さんが立ち合っていたらしい。 「くぬっ。くーちゃんはもらうよっ、うさこちゃんにサインをね」 「あーそれいいなー、色紙持っていこうかなー。でも旅してるといろんな有名人に会うかもしれないから、そうだ!サイン帖にしようっと」
―――― みやたちはサイン帖を手に入れた ―――――
「じゃあしたははやいから、みんなもうねるよぉ」 「はぁーい」  まなはお布団に入り、猫達は近くのかごの中で丸くなった。本当はいっしょに寝たいのだが、まなはものすごくねぞうが悪く、一緒にねられないのだ。 「おやすみなさ―い」 「くぬっ。ままだったらいっしょにねてくれるよねー。すーす―」 「あーくーちゃんもう寝てるー、ずるいー。ぐーぐー」 「むー。すぴーすぴー」                                    
  
 

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